重度COVID-19患者におけるファビピラビル およびナファモスタットの併用療法の効果はどのくらいですか?(症例シリーズ; Crit Care. 2020)

COVID-19 新型コロナウイルス感染症

Nafamostat Mesylate Treatment in Combination With Favipiravir for Patients Critically Ill With Covid-19: A Case Series

Kent Doi et al.

Crit Care. 2020 Jul 3;24(1):392. doi: 10.1186/s13054-020-03078-z.

PMID: 32620147

PMCID: PMC7332736

DOI: 10.1186/s13054-020-03078-z

背景

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome coronaviru, SARS-CoV-2)に対する特異的治療法の開発が急務となっている。抗マラリア薬や抗エボラウイルス薬など、いくつかの薬剤がコロナウイルス疾患2019(Covid-19)に向けて検討されている。

膜貫通型プロテアーゼセリン2(transmembrane protease serine 2, TMPRSS2)は、SARS-CoV-2の細胞質への侵入に重要な役割を果たしている。TMPRSS2プロテアーゼ活性を阻害することで、SARS-CoV-2のウイルス侵入を阻止できると考えられている。

既存の薬剤1,017種のハイスループットスクリーニングにより、臨床的に入手可能なセリンプロテアーゼ阻害剤であるナファモスタットメシル酸塩が、中東呼吸器症候群コロナウイルスのヒト上皮細胞への侵入を強力に阻害することが確認された。さらに最近、ナファモスタットメシル酸塩は、EC50が10 nM程度でSARS-CoV-2のヒト上皮細胞への侵入を阻害することが示された(in vitro)。ナファモスタットメシル酸塩は、日本では急性膵炎や播種性血管内凝固症の治療薬として臨床的に使用されている。静脈内投与では30~240nMの血中濃度が維持されており、ウイルスの侵入を阻害するのに十分な濃度である。

抗インフルエンザA型H1N1ウイルス薬のファビピラビルは、他のRNAウイルスに対しても抗ウイルス活性を示すことから、SARS-CoV-2に対する抗ウイルス作用が期待されている。日本では新型インフルエンザウイルス感染症の治療薬として承認されている。

方法

逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応でSARS-CoV-2感染が確認された成人11例を2020年4月6日から4月21日までの間に東京大学医学部附属病院の集中治療室(ICU)に入院させ、ファビピラビルと併用してナファモスタットメシル酸塩を投与した。

結果

・ICU入室時の人口統計学的・臨床的特徴、検査所見および放射線学的所見を表1 (https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-020-03078-z/tables/1)に示した。

・全患者が酸素療法を必要としていた。患者8例(73%)が侵襲的機械換気(mechanical ventilation, MV)を必要とし、3例(27%)が静脈外体外膜酸素療法(VV-ECMO)を必要とした。

ナファモスタットメシル酸塩[0.2 mg/kg/時 持続点滴静注、治療期間中央値14日間(IQR 10~14日間)]とファビピラビル[1日目3,600 mg、2日目1,600 mg/日、その後の治療期間中央値14日間(IQR 12~14日間)]を併用した。

副作用による抗ウイルス治療の中断は、9日目に高カリウム血症を発症した1例(ナファモスタットメシル酸塩)を除き、発生しなかった。患者11例、全例において、少なくとも33日間の病院での経過観察が行われた。5月22日現在、蘇生不可指示(do-not-resuscitate, DNR)を受けていた患者1例はICU7日目に死亡した。7例がMVを外すことに成功し(MV期間中央値16日(IQR 10~19日))、9例がICUから、7例が病院から退院した(Fig. 1)。

Fig. 1(本文より引用)

考察

本報告は、Covid-19に対するナファモスタットメシル酸塩とファビピラビルの併用療法についての最初の報告である。重症のCovid-19患者についてのこれまでの報告と比較して、本シリーズではMVを必要とする患者数が8例(73%)と高率であったが、死亡率は低率であった(1例[9%])。重症のCovid-19患者では、しばしば肺の広範な肺胞・間質性炎症を伴う微小血管血栓症や出血を呈している。このように、ナファモスタットメシル酸塩は、宿主上皮細胞へのウイルス侵入を直接標的とするだけでなく、血管内凝固障害を抑制することから、有効である可能性がある。

以上のことから、ファビピラビルとの併用により、ウイルスの侵入・複製を阻害するとともに、病原性宿主反応の抑制、すなわち高凝固症を抑制できる可能性がある。この症例シリーズの患者数は非常に少なかったが、死亡率が低いことから、重症のCovid-19患者にはファビピラビルとナファモスタットメシル酸塩の併用療法が有効である可能性が示唆された。なお、日本ではCovid-19に対するナファモスタットメシル酸塩とファビピラビルの併用療法の臨床試験が開始される予定である(jRCTs031200026)。

コメント

SARS-CoV-2感染によるCOVID-19患者において、ナファモスタットメシル酸塩あるいはファビピラビルが有効である可能性が示唆されている。ただし、いずれもin vitroの結果に基づいたものであり、ヒトを対象とした臨床試験の実施が急務であると考えられます。

さて、本試験結果によれば、重症COVID-19患者に対するナファモスタットメシル酸塩およびファビピラビル併用療法が有効である可能性が示されたとのこと。ただし、プラセボ群あるいは標準治療群を設定していませんので、11例の症例シリーズにおける各アウトカムに対する薬剤の効果は不明です。つまり、ナファモスタットメシル酸塩およびファビピラビル併用療法を実施しなかったとしても、同じ転帰を迎えたかもしれません。

また本試験では、有害事象について全く触れていません(対照群を設定していないため、触れられないのかもしれません)。薬剤使用による益が害を上回っているのか明らかにする必要があります。

✅まとめ✅ 重症COVID-19患者におけるナファモスタットメシル酸塩およびファビピラビル併用療法の効果は不明であり、今後の臨床試験の結果が待たれる

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