Pharmacologic Cardioversion of Recent-Onset Atrial Fibrillation and Flutter in the Emergency Department: A Systematic Review and Network Meta-analysis
Ian S deSouza et al.
Ann Emerg Med. 2020 Mar 12;S0196-0644(20)30025-1. doi: 10.1016/j.annemergmed.2020.01.013. Online ahead of print.
PMID: 32173135
DOI: 10.1016/j.annemergmed.2020.01.013
研究の目的
救急診療部(emergency department, ED)において、最近発症した心房細動や心房粗動に対する薬理学的な除細動療法のための抗不整脈薬を間接的に比較・順位付けするために、システマティックレビューとベイズネットワークメタアナリシスを実施する。
方法
MEDLINE、EMBASE、Web of Scienceを開始から2019年3月まで、ヒトを対象とし、英語に限定して検索した。また、未発表データも検索した。最近発症した心房細動または心房粗動を有する成人患者を登録し、抗不整脈薬、プラセボ、または対照を比較したランダム化比較試験に研究を限定した。
データ抽出の前に、4 時間以内の洞調律への転換率、除細動までの時間、有意な有害事象の発生率、30 日以内の血栓塞栓症の発生率を決定した。
システマティックレビューおよびメタアナリシスのPreferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analysesネットワークメタアナリシスに従ってデータを抽出し、コクランレビューハンドブックを用いて選択した試験を評価した。
結果
・システマティックレビューでは、当初640件の研究が同定されたが、包含基準を満たした研究は19件だった。
・心房細動患者2,069例をランダム化した研究18件から、心房細動転換率の転帰に関するデータが得られた。
・ランダム効果モデルを用いたベイズネットワークメタアナリシスでは、antazoline(オッズ比[OR] =24.9;95%信頼区間[CrI] 7.4~107.8)、tedisamil(OR =12.0;95%CrI 4.3~43.8)、vernakalant(OR =7.5;95%CrI 3.1~18.6)、プロパフェノン(OR =6.8;95% CrI 3.6~13.8)、フレカイニド(OR =6.1;95% CrI 2.9~13.2)、ibutilide (OR =4.1;95% CrI 1.8~9.6)は、プラセボやコントロールと比較して4時間以内の転換の可能性が高くなることと関連していた。全体的な質は低く、ネットワークには一貫性がなかった。
結論
最近発症した心房細動に対する4時間以内のED受診での薬理学的除細動については、どの治療法が優れているかを判断するためのエビデンスが不十分である。
いくつかの薬剤は、プラセボまたはコントロールと比較して、4時間以内の転帰の可能性が高くなることと関連している。
データが限られているため、最近発症した心房粗動に対する除細動を推奨することはできない。さらなる質の高い研究が必要である。
コメント
発作性の心房細動に対する短期的な除細動については、発作から48時間以内かつ緊急除細動の適応症例(肥大心、不全心、虚血心などの器質的心疾患のない孤立性心房細動)に対するレートコントロールが推奨されています。
以下、心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂)から抜粋;
“臨床上有意な器質的心疾患のない発作性心房細動で、持続が48時間未満の例へのNa チャネル遮断薬(ピルシカイニド、シベンゾリン、プロパフェノン、ジソピラミド、フレカイニド)投与” 【レベルA】
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これは、除細動時の塞栓症リスクが48時間超で高くなるためです。
さて、本試験結果により、発作性の孤立性心房細動に対する4時間以内の薬理学的除細動の有効性は明らかであったが、どの治療法が優れているのかについては、結論を出せなかったとのこと。心房細動は基本的に時間経過で症状が治りますが、病型によっては持続する場合もあり、継続的な血栓リスクを低下させるために、如何に同調律へ転換させるのかが重要となります。
オッズ比から結論は導けませんが、本試験結果から本邦未承認のantazolineの効果が高そう。続報に期待。
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