Effect of Convalescent Plasma Therapy on Time to Clinical Improvement in Patients With Severe and Life-threatening COVID-19: A Randomized Clinical Trial
Ling Li et al.
JAMA. 2020 Jun 3. doi: 10.1001/jama.2020.10044. Online ahead of print.
PMID: 32492084
Trial registration: Chinese Clinical Trial Registry: ChiCTR2000029757.
試験の重要性
回復期血漿療法(Convalescent Plasma Therapy)は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)患者に対する潜在的な治療オプションであるが、ランダム化臨床試験からのさらなるデータが必要である。
目的
COVID-19患者への回復期血漿療法の有効性と副作用を評価する。
試験デザイン、設定、参加者
2020年2月14日から2020年4月1日まで、中国・武漢の7つの医療センターで、2020年4月28日に最終フォローアップを行い、非盲検、多施設、ランダム化臨床試験を実施した。
本試験では、重症(呼吸困難および/または低酸素血症)または生命を脅かす(ショック、臓器不全、または機械的換気を必要とする)COVID-19患者(症状だけでなく検査で感染を確認)103例が対象となった。この試験は、予定されていた組み入れ数200例のうち103例が登録された後、早期に終了した。
介入
標準治療に加えて回復期血漿療法を投与した場合(n=52) vs. 標準治療単独(対照)(n=51)、疾患重症度で層別化。
主要アウトカムおよび測定方法
主要アウトカムは、28日以内の臨床改善までの時間であり、患者が生存したまま退院したか、あるいは6段階の重症度尺度(範囲:1[退院]〜6[死亡])で2ポイント減少したと定義された。
副次アウトカムとして、28日以内の死亡率、退院までの時間、およびウイルス性ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の結果がベースライン時に陽性であったものが72時間までに陰性転換した率が含まれた。
結果
・ランダム化された103例(年齢中央値 70歳、男性 60例[58.3%])のうち、101例(98.1%)が試験を終了した。
・28日以内に臨床的改善が認められたのは、回復期血漿群 51.9%(27/52例)と対照群 43.1%(22/51例)であった。
★群間差 =8.8%、95%CI -10.4%~28.0%
★ハザード比[HR] =1.40、95%CI 0.79~2.49;P =0.26
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・重症患者では、主要アウトカムは回復期血漿群 91.3%(21/23例)、対対照群 68.2%(15/22例)で発生した。
★HR =2.15、95%CI 1.07〜4.32;P =0.03
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・生命を脅かす疾患を有する患者では、主要転帰は回復期血漿群 20.7%(6/29例)、対照群 24.1%(7/29例)で発生した。
★HR =0.88、95%CI 0.30〜2.63;P =0.83(相互作用のP =0.17)。
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・28日目死亡率(15.7% vs. 24.0%;OR =0.65、95%CI 0.29〜1.46;P =0.30)またはランダム化から退院までの時間(28日目までの退院 51.0% vs. 36.0%;HR =1.61、95%CI 0.88〜2.93;P =0.12)に有意差はなかった。
・回復期血漿治療は、72時間後のウイルスPCR陰性転換率と関連しており、回復期血漿群 87.2%、対照群 37.5%であった。
★OR =11.39、95%CI 3.91~33.18;P < 0.001
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・回復期血漿群の患者2例が輸血後数時間以内に有害事象を経験したが、支持療法により改善した。
結論および関連性
重症または生命を脅かすCOVID-19患者において、標準治療に回復期血漿療法を追加しても、標準治療単独と比較して、28日以内の臨床的改善までの時間に統計学的に有意な改善は認められなかった。
臨床的に重要な差を検出するにはパワー不足であった可能性がある試験の早期終了により、解釈は制限されている。
コメント
COVID-19患者に対する回復期血漿療法の効果は限定的であり、エビデンスの集積が求められています。
さて、今回の研究結果によれば、標準治療への回復期血漿療法は、主要アウトカムである28日以内の臨床改善までの時間を短縮できませんでした。しかし、生命を脅かすほどの並存疾患を有さない重症患者においては、有意に回復が認められました。また死亡リスクについては、有意ではないもののリスク低下傾向が示されています(15.7% vs. 24.0%;OR =0.65、95%CI 0.29〜1.46;P =0.30)。
したがって、生命を脅かすほどの並存疾患を有さない重症COVID-19患者においては、回復期血漿療法の有効性が認められるかもしれません。しかし、サブグループ解析であるため、あくまでも仮説生成的な結果。
さらに、本試験はサンプル数不足、試験の早期中止、オープンラベルであることから、効果を過大評価あるいは過小評価、どちらの可能性も考えられます。
現段階では、回復期血漿療法を推奨も非推奨もできないと考えます。追試が必要であることは言うまでもありません。
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