メポリズマブは好酸球性COPDの増悪抑制に有効か?(DB-RCT; MATINEE試験; New Engl J Med. 2025)

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好酸球性COPDとは?

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は気道の炎症と閉塞を特徴とする疾患であり、特に好酸球性炎症が20~40%の患者で見られます。
好酸球が増加したCOPDでは、気道炎症が増悪を引き起こしやすいとされています。

メポリズマブは、インターロイキン-5(IL-5)を標的とするヒト化モノクローナル抗体であり、好酸球性喘息の治療薬として既に承認されていますが、好酸球性COPDに対する有効性は不明確でした。

本研究(MATINEE試験)は、好酸球数300/µL以上のCOPD患者を対象に、メポリズマブが中等度~重度の増悪を抑制できるかを検討した第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。

試験結果から明らかになったことは?

試験デザインと対象

項目内容
研究デザイン第3相、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験
対象者COPD患者、過去に増悪歴あり、血中好酸球数300/µL以上
治療法メポリズマブ100 mg皮下注(4週毎) vs. プラセボ(4週毎)
背景治療吸入三剤併用療法(ICS + LAMA + LABA)
試験期間52~104週間
主要評価項目年間増悪率(中等度~重度)
副次評価項目初回増悪までの期間、生活の質(HRQoL)、症状スコア、緊急外来または入院を要した増悪率

主な結果

評価項目メポリズマブ群プラセボ群群間差(95% CI)P値
年間増悪率0.80回/年1.01回/年0.79(0.66–0.94)0.01
初回増悪までの期間(中央値)419日321日0.77(0.64–0.93)0.009
生活の質(HRQoL)差なし差なし
有害事象発生率類似類似
  • メポリズマブ投与により、年間増悪率が21%減少(P=0.01)
  • 初回増悪までの期間が有意に延長(P=0.009)
  • 健康関連QOL(HRQoL)や症状改善に有意差なし
  • 有害事象発生率は両群で同等であり、安全性に差は認められなかった

コメント

本研究の結果から、メポリズマブは好酸球性COPDの中等度~重度増悪リスクを抑制できることが示されました。
特に、初回増悪までの期間が延長した点は、慢性管理を考慮する上で重要な知見です。

メポリズマブ(商品名:ヌーカラ)の現在の適応は、以下の3つです(小児は気管支喘息のみ)。
 ○気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)
 ○既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
 ○鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)注)

   注)最適使用推進ガイドライン対象

炎症を抑えることから、吸入三剤併用療法(ICS + LAMA + LABA)実施中で血中好酸球数300/µL以上のCOPD患者においても効果が示されたことになりますが、年間増悪率の群間差が0.2回が実臨床でどのくらい意義があるのか、生物学的製剤を導入する費用対効果に見合うものなのか、更なる検証が求められます。

実臨床での意義

  • 適応患者の選択が鍵
    • 血中好酸球数300/µL以上の患者が対象であり、炎症タイプを正確に評価することが必要です。
  • 生活の質(HRQoL)の改善は不充分
    • 症状緩和というよりは、増悪抑制を目的とした投与が適切です。
  • 安全性プロファイルは良好
    • 有害事象発生率はプラセボ群と同等であり、長期使用にも耐えうる可能性があります。

今後の課題として、QOL改善効果や長期的な転帰について、さらに大規模な試験での検証が望まれます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、メポリズマブは、好酸球性COPD患者における増悪リスクを低減し、吸入三剤療法への追加として有用であることが示唆された。

根拠となった試験の抄録(日本語訳)

背景:メポリズマブは、インターロイキン-5を標的とするヒト化モノクローナル抗体であり、好酸球性炎症に関与するサイトカインを阻害する。COPD患者の20~40%で好酸球性炎症が認められるが、メポリズマブの有効性は不明である。

方法:第3相、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照試験として実施。増悪歴があり、血中好酸球数が300/µL以上のCOPD患者を対象とした。すべての患者が三剤吸入療法を受けており、1:1の割合でメポリズマブ100 mgまたはプラセボを4週間ごとに皮下注射した。主要評価項目は中等度~重度の増悪頻度であった。

結果:804人がランダム化され、403人がメポリズマブ、401人がプラセボを受けた。年間増悪率はメポリズマブ群で0.80回、プラセボ群で1.01回であり、比率は0.79(95%CI 0.66~0.94、P=0.01)であった。初回増悪までの期間はメポリズマブ群で419日、プラセボ群で321日であり、ハザード比は0.77(95%CI 0.64~0.93、P=0.009)であった。健康関連QOLや症状の差は認められず、有害事象発生率も両群で同等であった。

結論:メポリズマブは、好酸球性COPD患者における増悪リスクを低減し、吸入三剤療法への追加として有用であることが示唆された。

引用文献

Mepolizumab for Chronic Obstructive Pulmonary Disease with an Eosinophilic Phenotype: A Randomized Clinical Trial
Jones PW, Brightling CE, Pavord ID, et al.
PMID: 40305712
New Engl J Med. 2025 Apr 24; NCT04133909. doi:10.1056/NEJMoa2405110.
ー 続きを読む:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40305712/

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