急性静脈血栓塞栓症に対する抗血小板療法の併用は直接経口抗凝固薬の有効性と安全性に影響しますか?(SR&MA; J Thromb Haemost. 2020)

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Impact of Concomitant Antiplatelet Therapy on the Efficacy and Safety of Direct Oral Anticoagulants for Acute Venous Thromboembolism: Systematic Review and Meta-Analysis

Emanuele Valeriani et al.

J Thromb Haemost. 2020 Mar 22. doi: 10.1111/jth.14807. Online ahead of print.

PMID: 32202042

DOI: 10.1111/jth.14807

Keywords: anticoagulants; aspirin; hemorrhage; platelet aggregation inhibitors; venous thromboembolism.

背景

静脈血栓塞栓症(VTE)の治療には、ビタミンK拮抗薬(VKA)よりも直接経口抗凝固薬(DOAC)が推奨されている。抗血小板療法の併用は、DOACsの抗血栓効果を増強する可能性がある。

目的

抗血小板療法の併用がDOACの有効性と安全性に及ぼす影響を評価した。

患者/方法

MEDLINE、EMBASE、Clinicaltrial.govで、急性VTEの治療に対するDOACのランダム化比較試験を検索した。

有効性のアウトカムは症候性再発VTEとVTE関連死であり、安全性のアウトカムは大出血であった。

結果

・ランダム化比較試験6件には患者26,924例が含まれ、そのうち3,550例(13.2%)がアスピリン(67.7%)を中心とした抗血小板療法を併用していた。

・抗血小板療法を併用しても、いずれかの経口抗凝固薬(オッズ比[OR]=1.17、95%信頼区間[CI] 0.92~1.48)、DOACs(OR =1.21、95%CI 0.86~1.71)、VKAs単独(OR =1.16、95%CI 0.77~1.73)では、VTEの再発およびVTE関連死亡の発生率は低下しなかった。

・抗血小板療法なしの場合と比較して、抗血小板療法の併用は、いずれかの経口抗凝固薬(OR =1.79、95%CI 1.22〜2.63)、DOACs(OR =1.89、95%CI 1.04〜3.44)、またはVKAs(OR =1.73、95%CI 1.16〜2.59)を投与されている患者において、大出血のリスクが高いことと関連していた。

・抗血小板療法を併用している患者では、DOACまたはVKAによる有効性(OR =0.99、95%CI 0.64〜1.51)および安全性(OR =0.68、95%CI 0.32〜1.45)の転帰に統計学的に有意な差はなかった。

結論

抗血小板療法と経口抗凝固薬の併用は、VTEの再発リスクに影響を与えず、大出血のリスクを高めるようである。

コメント

静脈血栓塞栓症の治療において、ビタミンK拮抗薬よりも直接経口抗凝固薬(DOAC)が推奨されているようです。

抗血小板薬と抗凝固薬の使い分けは、動脈血あるいは静脈血どちらに関連する疾患により使い分けるのが教科書的には一般的です。動脈血の凝固は、基本的に損傷箇所へ血小板が集積して血栓を作り、そこに繊維状のフィブリンが周囲の血球を巻き込んで血餅を作ります。つまり「動脈血栓」とは血小板が主体となり血流の速い動脈で形成される血栓です。したがって、動脈血の血栓形成の予防には、抗血小板薬が用いられます。

一方、「静脈血栓」とは凝固因子が主体となり血流の遅い静脈で形成される血栓です。赤血球とフィブリンに富んだ赤色血栓に加えて、血小板とフィブリンに富む白色血栓および混合血栓が種々の程度に存在する複合血栓の像を呈しています。したがって静脈血の血栓形成の予防には、抗凝固薬が用いられますが、血栓形成において血小板の関与もあるため、理論的には抗血小板薬による効果も得られる可能性があります。

以上のことから、動脈血による疾患であるか静脈血による疾患であるかにより、治療方法が異なります。しかし実臨床では、しばしば両薬剤を併用されることがあります。

ちなみに血栓と塞栓の違いは、血管または心臓内で形成され、他の部位に移動しないものが「血栓(thrombus)」であり、他の部位に移動するものが「塞栓(embolus)」です。

さて、今回の研究結果によれば、抗血小板薬と抗凝固薬の併用により、VTEの再発およびVTE関連死亡の発生率は低下しませんでした。効果の区間推定値をみると、むしろリスクは増加傾向です。さらに、第出血リスクについては有意に増加していました。

両薬剤を併用する意義はなさそうです。

✅まとめ✅ 急性静脈血栓塞栓症に対するDOACへの抗血小板薬の併用は、再発リスクが増加傾向、出血リスクは有意に増加した

コメント

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