When choice is demotivating: can one desire too much of a good thing?
Iyengar SS et al.
J Pers Soc Psychol. 2000 Dec;79(6):995-1006.
PMID: 11138768 DOI: 10.1037//0022-3514.79.6.995
抄録
現在の心理学の理論と研究では、個人的な選択を持つことの肯定的な感情と動機付けの結果を肯定している。これらの知見は、選択肢が多ければ多いほど良い、つまり人間の管理能力や、選択肢を求める人間の欲求は無限であるという一般的な考えにつながっている。
3つの実験研究から得られた知見は、より多くの選択肢を持っていることが必ずしも選択肢が少ない場合よりもより本質的に動機づけであるというこの暗黙の仮定に厳しく挑戦している。
フィールドと実験室の両方の研究設定で実施されたこれらの実験は、選択肢が24または30のより広範な配列よりもむしろ6つの限られた配列を提供されたときに、人々はグルメジャムやチョコレートを購入したり、任意の授業の小論文の課題を引き受ける可能性が高いことを示している。さらに参加者は、当初の選択肢が制限されていた場合には、その後の選択に対する満足度が高くなり、より良い小論文を書くようになったと報告した。今後の研究への示唆が議論されている。
コメント
商品の販売数を伸ばすための最適な選択肢の数はいくつか?という命題に対して選択肢数を検証した研究報告。ビジネス界でもよく用いられるジャム理論の原著です。
さて、ジャム理論と呼ばれているぐらいなので、ジャムの販売しか検討していないのかと思っていましたが、実際には、ジャムとチョコレートの販売数、そして小論文を引き受けるか否か、計3つの実験設定について検証している論文でした。
さて、結果としては、販売されているジャムやチョコレートの種類が多い場合(26あるいは30種類)は少ない場合(6種類)と比較して、販売数が少なかった。つまり選択肢が多いと購買に繋がらない可能性が示されました。
ここからは、ややオーバースペキュレーションだと思うのですが、何かの商品を売りたい場合には、選択性を多くしない方が良いとされているわけです。
今回の研究の限界としては、小規模な研究であること、購買者の背景を調整できていないということです。つまり他の商品や購買者に転用する場合、同じような現象(結果)が認められるのかは分からないということです。また購買者の背景についてですが、例えば、ジャムについて知識がある人と、知識がない人では、購買にかかる心理的負荷は変わる可能性が充分にあると思います。なぜなら人は知らないものについては、不安や恐怖を感じ、忌避する傾向にあります。したがって、購買者の背景によっては選択肢の数に左右されない可能性もあります。
一方、ジャム理論とは逆の結果が得られている研究もあります(文献1)。この研究結果では、購買者に主観的知識がない場合、選択肢のオプションが多いときに購買意欲が上がるようです。反対に主観的知識がある場合、むしろ選択肢が多いときに購買意欲が下がるようです。
個人的な見解としては、ある商品に対する知識が少ない場合は、そもそも購入しないと考えます。したがって、選択肢の数は重要な要因であるが、購買者の背景知識の有無の方が、より重要な購買意欲の因子であると考えています。となると、どうすれば良いのかは明快で “体験” させれば良いわけです。つまり知識を得られやすい環境づくりを心がければ良いことになります。
✅まとめ✅ 選択肢が26あるいは30ある場合は、選択肢が6つの場合と比較して、購買意欲が下がるかもしれない
参考文献
1: Hadar L, Sood S. When knowledge is demotivating: subjective knowledge and choice overload. Psychol Sci. 2014 Sep;25(9):1739-47. doi: 10.1177/0956797614539165. Epub 2014 Jul 18. PubMed PMID: 25037963.
コメント