SGLT-2阻害薬の入院前使用は、2型糖尿病患者におけるCOVID-19転帰を改善するかもしれない(SR&MA; Diabetes Res Clin Pract. 2022)

COVID-19を発症した2型糖尿病患者

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)により引き起こされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月に中国武漢で初めて報告された呼吸器感染症です。本疾患は急速に各国に広がり、2022年10月19日までの総報告患者数が6億2100万人を超え、650万人が死亡するグローバルパンデミックを引き起こしています(WHO)。 COVID-19の症状は、発熱や咳などの無症状または軽度のものから、敗血症、意識変容、ショックなどの重篤な状態まで幅広く変化します。これらの臨床症状の違いは、患者の併存要因に大きく影響されています。

高血圧、糖尿病、心血管疾患、肥満および神経疾患を有する患者は、より一般的に重篤な状態を発症し、しばしば死亡に至ります。COVID-19パンデミック前では、世界中の糖尿病患者は2014年に4億2200万人に達し、2019年には合計4億6300万人に増加しています。Pinedo-Torresらによるメタ解析では、糖尿病の有病率はSARS-CoV-2感染者1,000人あたり約42例で、死亡率は10%であることが示されています。158件の観察研究を基にしたメタ解析においても、糖尿病患者はICU入室とCOVID-19関連死亡のリスクが高くなることを示しています。したがって、高血糖(空腹時血糖値(FPG)またはヘモグロビンA1c(HbA1c)から測定)はCOVID-19の重症度と深く関連していると考えられ、血糖降下治療薬の使用は依然として糖尿病の管理における重要な側面の一つになっていると考えられます。

以前の研究では、抗糖尿病薬のうち、メトホルミンジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬、およびグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、COVID-19による死亡を有意に減少させることが示されましたが、その一方でインスリン治療がCOVID-19の予後不良と関連していたことが明らかにされています。また、特に慢性腎臓病や心不全を併発している糖尿病患者においてよく用いられる血糖降下療法として、ナトリウムグルコーストランスポーター2阻害剤(SGLT-2i)がありますが、COVID-19を発症した糖尿病患者におけるSGLT-2iの有益性については充分に検討されていません。

そこで今回は、入院前の血糖降下治療としてSGLT-2iを使用した糖尿病患者におけるCOVID-19の転帰を解析することを目的に実施されたシステマティックレビュー・メタ解析の結果をご紹介します。

本研究では、Medline、Scopus、Cochrane Library、ClinicalTrials.govの4つのデータベースで、2022年10月24日まで特定のキーワードで文献検索が行われました。COVID-19の糖尿病患者におけるSGLT-2iに関するすべての論文が本研究の対象となりました。

試験結果から明らかになったことは?

合計17件の研究が解析に含まれました。

オッズ比 OR
(95%CI)
死亡率OR 0.69
0.56~0.87
p=0.001
I2=91%
COVID-19重症度OR 0.88
0.80~0.97
p=0.008
I2=13%

メタ解析の結果、入院前のSGLT-2iの使用は、死亡率(OR 0.69、95%CI 0.56~0.87、p=0.001、I2=91%)およびCOVID-19の重症度(OR 0.88、95%CI 0.80~0.97、p=0.008、I2=13%)と関連していたことが明らかとなりました。

このCOVID-19関連死亡に対するSGLT-2iの効果は、年齢(p=0.2335)、性別(p=0.2742)、高血圧(p=0.2165)、心不全(p=0.1616)、HbA1c値(p=0.4924)、メトホルミン使用(p=0.6617)、糖尿病の罹患期間(p=0.7233)およびBMI(p=0.1797)などの患者の因子によって大きく左右されないことが示されました。

コメント

糖尿病治療薬がCOVID-19の重症度や死亡リスクの低減に影響する可能性が報告されていますが、SGLT2阻害薬については充分に検証されていません。

さて、本試験結果によれば、糖尿病患者における血糖降下治療薬としてのSGLT-2iが重症COVID-19リスクや死亡リスクを低減する可能性が示されました。ただし、解析に組み入れられた研究は、ランダム化比較試験が1件、横断研究が1件、後向きコホート研究が15件であり、バイアスリスクを排除できません。また、死亡リスクについては結果の異質性(I2)が91%と高く、メタ解析を実施しない方が適していた可能性が高いと考えられます。COVID-19重症度については異質性(I2)が13%と低いものの、同様の理由から追試が求められると考えられます。

したがって、本試験結果をもって、COVID-19流行期における血糖降下療法としてSGLT2阻害薬を推奨することは難しく、著者の結論はオーバースペキュレーションであると考えます。

続報に期待。

☑まとめ☑ 糖尿病患者における血糖降下治療薬としてのSGLT-2iが重症COVID-19リスクや死亡リスクを低減する可能性が示されたものの、試験間の異質性が高く、結果が覆る可能性が高い。

根拠となった試験の抄録

目的:本研究は、糖尿病患者のCOVID-19アウトカムに対する入院前のNa glucose transporter-2 inhibitor(SGLT-2i)使用の有効性を検討することを目的としたものである。

方法:Medline、Scopus、Cochrane Library、ClinicalTrials.govの4つのデータベースで、2022年10月24日まで特定のキーワードで文献検索を行った。COVID-19の糖尿病患者におけるSGLT-2iに関するすべての論文を本研究の対象とした。本試験におけるアウトカムは、ランダム効果モデルを用いて計算し、95%信頼区間(CI)付きのプールされたオッズ比(OR)を作成した。

結果:合計17件の研究が解析に含まれた。メタ解析の結果、入院前のSGLT-2iの使用は、死亡率(OR 0.69、95%CI 0.56~0.87、p=0.001、I2=91%)およびCOVID-19の重症度(OR 0.88、95%CI 0.80~0.97、p=0.008、I2=13%)と関連していたことが明らかとなった。このCOVID-19関連死亡に対するSGLT-2iの効果は、年齢(p=0.2335)、性別(p=0.2742)、高血圧(p=0.2165)、心不全(p=0.1616)、HbA1c値(p=0.4924)、メトホルミン使用(p=0.6617)、糖尿病の期間(p=0.7233)およびBMI(p=0.1797)などの患者の因子によって大きく左右されないことが示された。

結論:本研究は、糖尿病患者における血糖降下治療薬としてのSGLT-2iがCOVID-19のアウトカムにプラスの影響を与えることを示唆した。したがって、特にCOVID-19流行期は、抗糖尿病薬として選択することが可能であると考えられる。

登録の詳細:CRCD42022369784

キーワード:抗糖尿病、コロナウイルス病2019、Covid-19、糖尿病、SGLT-2

引用文献

Pre-admission use of sodium glucose transporter-2 inhibitor (SGLT-2i) may significantly improves Covid-19 outcomes in patients with diabetes: A systematic review, meta-analysis, and meta-regression
Hikmat Permana et al. PMID: 36502891 PMCID: PMC9731816 DOI: 10.1016/j.diabres.2022.110205
Diabetes Res Clin Pract. 2022 Dec 9;195:110205. doi: 10.1016/j.diabres.2022.110205. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36502891/

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