進行した慢性腎臓病患者においてACE阻害薬は中止した方が良いのか?(Open-RCT; STOP ACEi試験; NEJM 2022)

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RAS阻害薬を使用中に慢性腎臓病が進行した場合、RAS阻害薬を中止した方が良いのか?

レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)など)は、軽度または中等度の慢性腎臓病の進行を遅らせます。しかし、いくつかの研究結果から、進行した慢性腎臓病患者におけるRAS阻害剤の中止は、推定糸球体濾過量(eGFR)を増加させるか、その減少を遅らせる可能性が示唆されており、一貫した結果は示されていいません。

そこで今回は、進行性の慢性腎臓病患者(eGFR<30mL/分/体表面積1.73 m2を、RAS阻害剤による治療を中止するか継続するかをランダムに割付け、3年後までのeGFR推移を検討したSTOP ACEi試験の結果をご紹介します。

この多施設共同非盲検試験では、主要転帰は3年後のeGFR(腎代替療法開始後に得られたeGFR値は除外)、副次的転帰には、末期腎不全(ESKD)の発症、eGFRの50%以上の低下またはESKDを含む腎代替療法の開始の複合、入院、血圧、運動能力、QOL(生活の質)が含まれました。

試験結果から明らかになったことは?

RAS阻害薬中止群RAS阻害薬継続群群間差あるいは
ハザード比
(95%CI)
最小二乗平均(±SE)のeGFR12.6±0.7
mL/分/1.73m2
13.3±0.6
mL/分/1.73m2
差 -0.7
-2.5 ~ 1.0)P=0.42
ESKDまたは腎代替療法の開始128例
(62%)
115例
(56%)
ハザード比 1.28
0.99~1.65

3年後の時点で、登録された411例のうち、最小二乗平均(±SE)のeGFRは、RAS阻害薬中止群で12.6±0.7mL/分/1.73m2、継続群で13.3±0.6mL/分/1.73m2(差 -0.7、95%信頼区間[CI] -2.5 ~ 1.0、P=0.42)、継続群で負の値が有利でした。

事前に規定したサブグループによる転帰の異質性は観察されませんでした。

ESKDまたは腎代替療法の開始は、中止群では128例(62%)に、継続群では115例(56%)に認められました(ハザード比 1.28、95%CI 0.99~1.65)。

有害事象は、心血管イベント(108例 vs. 88例)および死亡(20例 vs. 22例)に関して、中止群と継続群で同様であった。

コメント

RAS阻害薬を使用中に慢性腎臓病が進行した場合、RAS阻害薬を中止した方が良いのか否かについては、結論が得られていませんでした。

さて、本試験結果によれば、進行性の慢性腎臓病患者において、RAS阻害薬の中止は、RAS阻害薬の継続と比較して、長期的なeGFR低下率に有意な群間差を認めませんでした。

統計学的な有意差はないものの、心血管イベントの増加はRAS阻害薬中止群の方が多いようです。あくまでも仮説生成的な結果ですが、eGFRに変化がなく、心血管イベントのリスクを増加させないようRAS阻害薬は継続しておいた方が良いのかもしれません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 進行性の慢性腎臓病患者において、RAS阻害薬の中止は、RAS阻害薬の継続と比較して、長期的なeGFR低下率に有意な群間差を認めなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)など)は、軽度または中等度の慢性腎臓病の進行を遅らせる。しかし、いくつかの研究結果から、進行した慢性腎臓病患者におけるRAS阻害剤の中止は、推定糸球体濾過量(eGFR)を増加させるか、その減少を遅らせる可能性が示唆されている。

方法:この多施設共同非盲検試験において、進行性の慢性腎臓病患者(eGFR<30mL/分/体表面積1.73 m2)を、RAS阻害剤による治療を中止するか継続するかをランダムに割付けた。
主要転帰は3年後のeGFRとし、腎代替療法開始後に得られたeGFR値は除外した。副次的転帰には、末期腎不全(ESKD)の発症、eGFRの50%以上の低下またはESKDを含む腎代替療法の開始の複合、入院、血圧、運動能力、QOL(生活の質)が含まれた。年齢、eGFR、糖尿病のタイプ、平均動脈圧、蛋白尿の有無により、事前に特定したサブグループを定義した。

結果:3年後の時点で、登録された411例のうち、最小二乗平均(±SE)のeGFRは、RAS阻害薬中止群で12.6±0.7mL/分/1.73m2、継続群で13.3±0.6mL/分/1.73m2(差 -0.7、95%信頼区間[CI] -2.5 ~ 1.0、P=0.42)、継続群で負の値が有利であった。事前に規定したサブグループによる転帰の異質性は観察されなかった。ESKDまたは腎代替療法の開始は、中止群では128例(62%)に、継続群では115例(56%)に認められた(ハザード比 1.28、95%CI 0.99~1.65)。有害事象は、心血管イベント(108例 vs. 88例)および死亡(20例 vs. 22例)に関して、中止群と継続群で同様であった。

結論:進行性慢性腎臓病患者において、RAS阻害薬の中止は、長期的なeGFR低下率に有意な群間差を認めなかった。

資金提供:国立健康研究所および医学研究評議会の助成

EudraCT番号:2013-003798-82
ISTRCTN番号:62869767

引用文献

Renin-Angiotensin System Inhibition in Advanced Chronic Kidney Disease
Sunil Bhandari  et al. PMID: 36326117 DOI: 10.1056/NEJMoa2210639
N Engl J Med. 2022 Nov 3. doi: 10.1056/NEJMoa2210639. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36326117/

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