集中治療室における敗血症患者に対するビタミンCの静脈内投与の効果はどのくらいですか?(RCT; LOVIT試験; N Engl J Med. 2022)

nurse checking the dextrose of a patient 09_感染症
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敗血症に対するビタミンCの効果は?

集中治療室(ICU)で昇圧療法を受けている敗血症の成人患者に対するビタミンC静注の使用を評価した研究では、死亡や臓器機能障害のリスクに関してさまざまな結果が示されています。しかし、一貫した結果が得られていないことから、更なる研究結果が求められます。

そこで今回は、ICUに24時間以内に入室し、主診断として感染が証明または疑われ、昇圧薬を投与されている成人に対して、ビタミンC(50mg/kgの用量)またはマッチしたプラセボのいずれかの点滴を最長96時間にわたり6時間ごとに投与する群に割り付けたランダム化プラセボ対照、LOVIT試験の結果をご紹介します。本試験の主要アウトカムは、28日目の死亡または持続的な臓器機能障害(血管拡張薬の使用、侵襲的機械換気、新たな腎代替療法により定義)の複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

合計872例の患者がランダム化を受けました(ビタミンC群435例、対照群437例)。

ビタミンC群対照群
(プラセボ)
リスク比
(95%CI)
主要アウトカム*429例中191例
(44.5%)
434例中167例
(38.5%)
1.21
1.04~1.40
P=0.01
28日死亡429例中152例
(35.4%)
434例中137例
(31.6%)
1.17
0.98〜1.40
持続性臓器障害429例中39例
(9.1%)
434例中30例
(6.9%)
1.30
0.83~2.05
*28日目の死亡または持続的な臓器機能障害(血管拡張薬の使用、侵襲的機械換気、新たな腎代替療法により定義)の複合

主要アウトカムは、ビタミンC群で429例中191例(44.5%)に、対照群で434例中167例(38.5%)に生じました(リスク比 1.21、95%信頼区間[CI] 1.04~1.40;P=0.01)。

28日後、ビタミンC群では429例中152例(35.4%)、プラセボ群では434例中137例(31.6%)で死亡(リスク比 1.17、95%CI 0.98〜1.40)、429例中39例(9.1%)、434例中30例(6.9%)で持続性臓器障害がそれぞれ発生しました(リスク比 1.30、95%CI 0.83~2.05)。

臓器機能スコア、バイオマーカー、6ヵ月生存、健康関連QOL、ステージ3の急性腎障害、低血糖エピソードについては、両群で同様の所見が得られました。ビタミンC群では、1例が重症低血糖を、1例が重篤なアナフィラキシーを発症しました。

コメント

敗血症患者では、ビタミンC濃度が低いことが報告されており、このため、ビタミンC投与が検討されます。本試験では、ビタミンC群で20.6±70.6μmol/L、プラセボ群で19.1±39.7μmol/Lであり、血漿中ビタミンCの正常値22.4μmol/L(範囲 13.6~32.9)より低値でした。

さて、本試験結果によれば、ICUで昇圧療法を受けている敗血症患者において、ビタミンC(50mg/kgの用量)またはマッチしたプラセボのいずれかの点滴を最長96時間にわたり6時間ごとに投与した場合、28日後の死亡または持続的な臓器機能不全のリスクがビタミンC群で高いことが示されました。

ベースライン時における何らかの交絡因子(急性呼吸窮迫症候群の有無など)が影響している可能性がありますが、ICUで昇圧療法を受けている敗血症患者において、ルーティンなビタミンC静注は推奨されないかもしれません。

続報に期待。

photo of woman lying in hospital bed

✅まとめ✅ ICUで昇圧療法を受けている敗血症患者において、ビタミンC静注群はプラセボ群に比べ、28日後の死亡または持続的な臓器機能不全のリスクが高いことが示された。

根拠となった試験の抄録

背景:集中治療室(ICU)で昇圧療法を受けている敗血症の成人患者に対するビタミンC静注の使用を評価した研究では、死亡や臓器機能障害のリスクに関してさまざまな結果が示されている。

方法:このランダム化プラセボ対照試験では、ICUに24時間以内に入室し、主診断として感染が証明または疑われ、昇圧薬を投与されている成人に対して、ビタミンC(50mg/kgの用量)またはマッチしたプラセボのいずれかの点滴を最長96時間にわたり6時間ごとに投与する群に割り付けた。
主要アウトカムは、28日目の死亡または持続的な臓器機能障害(血管拡張薬の使用、侵襲的機械換気、新たな腎代替療法により定義)の複合とした。

結果:合計872例の患者がランダム化を受けた(ビタミンC群435例、対照群437例)。主要アウトカムは、ビタミンC群で429例中191例(44.5%)に、対照群で434例中167例(38.5%)に生じた(リスク比 1.21、95%信頼区間[CI] 1.04~1.40;P=0.01)。28日後、ビタミンC群では429例中152例(35.4%)、プラセボ群では434例中137例(31.6%)で死亡(リスク比 1.17、95%CI 0.98〜1.40)、429例中39例(9.1%)、434例中30例(6.9%)で持続性臓器障害がそれぞれ発生した(リスク比 1.30、95%CI 0.83~2.05)。臓器機能スコア、バイオマーカー、6ヵ月生存、健康関連QOL、ステージ3の急性腎障害、低血糖エピソードについては、両群で同様の所見が得られた。ビタミンC群では、1例が重症低血糖を、1例が重篤なアナフィラキシーを発症した。

結論:ICUで昇圧療法を受けている成人の敗血症患者において、ビタミンC静注群はプラセボ群に比べ、28日後の死亡または持続的な臓器機能不全のリスクが高いことが示された。

資金提供:Lotte and John Hecht Memorial Foundation

ClinicalTrials.gov番号:NCT03680274

引用文献

Intravenous Vitamin C in Adults with Sepsis in the Intensive Care Unit
François Lamontagne et al. PMID: 35704292 DOI: 10.1056/NEJMoa2200644
N Engl J Med. 2022 Jun 15. doi: 10.1056/NEJMoa2200644. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35704292/

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