血液透析患者における喫煙と骨折による入院リスクはどのくらい?(日本PSマッチコホート研究; Nephrol Dial Transplant. 2021)

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喫煙と骨折による入院リスクとの関係性は?

これまでの疫学研究の結果、喫煙は一般集団において骨折の生活習慣病リスク因子として確立されています。しかし、血液透析患者を対象とした特有のエビデンスについては充分に検討されていません。

そこで今回は、日本透析医学会腎データ登録のデータを用いて、喫煙状況と骨折との関連を検討した全国規模のコホート研究の結果をご紹介します。

2016年末に週3回の維持血液透析を受けている20歳以上の患者154,077例(男性64.2%、平均年齢68歳)を1年間追跡しました。このうち、19,004例(12.3%)の患者が現在の喫煙者でした。解析は、あらゆる骨折による入院の標準化罹患率比を算出し、潜在的交絡因子をコントロールした多変量ロジスティック回帰分析で行われました。また、感度分析として、傾向スコアマッチングとサブグループ分析が実施されました。

試験結果から明らかになったことは?

1年間の追跡期間中、患者3,291例に3,337件の入院を要する骨折(股関節骨折1,201件、椎骨折479件、その他の骨折1,657件)が発生しました。

現在喫煙している集団における
入院を要する骨折リスク
(vs. 非喫煙集団)
標準化発生率1.24
(95%CI 1.12~1.39
完全調整モデル1.25
(95%CI 1.10~1.42
PSマッチングオッズ比 1.25
(95%CI 1.05〜1.48

現在喫煙している集団の年齢および性別による標準化発生率は、非喫煙者に比べて1.24(95%信頼区間 1.12~1.39)でした。標準化された罹患率は、年齢層と性別で層別しても同様であった。多変量ロジスティック回帰分析の結果、完全に調整されたモデルでは、非喫煙者に比べて喫煙者は入院を要する骨折のリスクが1.25倍(95%信頼区間 1.10~1.42)高いことが示されました。傾向スコアマッチングでも同様の結果が得られました(オッズ比 1.25、95%信頼区間 1.05〜1.48)。ベースラインの共変量によるサブグループ解析では、有意な相互作用は認められませんでした。

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タバコに含まれる成分のうち、特にニコチンが破骨細胞を増加させることが報告されています(PMID: 23410538)。そのため喫煙による骨密度の低下、これに伴う骨折リスク増加の可能性が考えられますが、基礎研究の結果であることから、ヒトにおける検証が求められます。

さて、本試験結果によれば、現在の喫煙により入院を要する骨折リスク増加が認められました。いずれの解析においてもリスク増加の程度は同様であることから、リスク増加は疑いようがありません。やはり喫煙によるメリットはなさそうです。とはいえ、本試験はコホート研究であることから、あくまでも相関関係が示されたにすぎません。追試が求められます。

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✅まとめ✅ 喫煙は、血液透析患者が入院を必要とする骨折を起こす有意なリスク因子かもしれない。

根拠となった試験の抄録

背景:喫煙は一般集団において骨折の生活習慣病リスク因子として確立されているが、血液透析患者に特有のエビデンスは不足している。今回の全国規模のコホート研究では、日本透析医学会腎データ登録のデータを用いて、喫煙状況と骨折との関連を検討した。

方法:2016年末に週3回の維持血液透析を受けている20歳以上の患者154,077例(男性64.2%、平均年齢68歳)を1年間追跡した。このうち、19,004例(12.3%)の患者が現在の喫煙者だった。あらゆる骨折による入院の標準化罹患率比を算出し、潜在的交絡因子をコントロールした多変量ロジスティック回帰分析で解析した。また、感度分析として、傾向スコアマッチングとサブグループ分析を行った。

結果:1年間の追跡期間中、患者3,291例に3,337件の入院を要する骨折(股関節骨折1,201件、椎骨折479件、その他の骨折1,657件)が発生した。現在喫煙している集団の年齢および性別による標準化発生率は、非喫煙者に比べて1.24(95%信頼区間 1.12~1.39)であった。標準化された罹患率は、年齢層と性別で層別しても同様であった。多変量ロジスティック回帰分析の結果、完全に調整されたモデルでは、非喫煙者に比べて喫煙者は入院を要する骨折のリスクが1.25倍(95%信頼区間 1.10~1.42)高かった。傾向スコアマッチングでも同様の結果が得られた(オッズ比1.25、95%信頼区間 1.05〜1.48)。ベースラインの共変量によるサブグループ解析では、有意な相互作用は認められなかった。

結論:喫煙は、血液透析患者が入院を必要とする骨折を起こす有意なリスク因子である。

キーワード:CKD-MBD、ESRD、慢性血液透析、疫学、血液透析、ミネラル代謝

引用文献

Smoking and risk of fractures requiring hospitalization in hemodialysis patients: a nationwide cohort study in Japan
Minako Wakasugi et al. PMID: 34718771 DOI: 10.1093/ndt/gfab307
Nephrol Dial Transplant. 2021 Oct 27;gfab307. doi: 10.1093/ndt/gfab307. Online ahead of print.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34718771/

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