症状の有無にかかわらず、心房細動に対する系統的早期のリズムコントロール戦略は有効ですか?(PROBE; EAST-AFNET 4試験の事前設定解析; Eur Heart J. 2021)

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心房細動患者における早期のリズムコントロールの有効性は症状の有無で異なるのか?

心房細動 (Atrial Fibrillation: AF) は、 現在の最適な管理のもとでも、 心血管死、 脳卒中、 および心不全の主要な原因となっています(PMID: 32860505)。心房細動患者の約1/3は、 心房細動に関連する症状を持たず、 高齢者や持続性心房細動の患者に多いことが報告されています(PMID: 25974193PMID: 28228467)。無症候性心房細動は、症候性心房細動と比較して、脳卒中、心血管死、その他の心血管系イベントの発生率が同等であることも報告されています(PMID: 25534423PMID: 30227964PMID: 33607088PMID: 30882141)。

現代の心房細動ガイドラインでは、すべての心房細動患者に抗凝固療法と心血管合併症の治療を推奨していますが、リズムコントロールは症候性心房細動患者に限定されています(PMID: 32860505)。しかし、EAST-AFNET 4試験とそれ以前のATHENA試験では、リズムコントロール療法が心血管イベントをさらに減少させることが示唆されており、早期のリズムコントロール療法(EAST-AFNET 4)またはドロネダロン(ATHENA試験)にランダムに割り付けられた患者では心血管合併症が少ないことが報告されています(ATHENA試験)。

そこで今回は、EAST-AFNET 4試験の参加者である心房細動患者を症候性、無症候性に分けて解析した試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

Graphical Abstract
Graphical Abstract(https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehab593/6358078より引用)

コメント

ここ数年、早期のリズムコントロールに注目が集まっている印象です。

心房細動患者に対する薬物療法としては、リズムコントロールとレートコントロールに大別できます。過去に行われたAFFIRM試験において、死亡リスクの発生率は両治療間に差がないことが報告されています。認容性や副作用を鑑み、一般的にはレートコントロールが行われており、リズムコントロールについては症状を有する心房細動患者(症候性)においてのみ診療ガイドラインで推奨されています。ここに疑問を投げかけたのがATHENA試験とEAST-AFNET 4試験です。

さて、本試験結果によれば、症状の有無に関わらず心房細動患者に対する早期のリズムコントロールは、通常ケアと比較して、心血管イベント(心血管疾患による死亡、脳卒中、心不全または急性冠症候群の悪化による入院の複合)の発生を低下させました。

あくまでも仮説生成的な結果ではありますが、無症候性患者においてもリズムコントロールを早期に実施した方が良いのかもしれません。とはいえ、無症候性患者を対象とした追試が求められます。

今後の試験結果に期待。

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✅まとめ✅ 症状の有無に関わらず心房細動患者に対する早期のリズムコントロールは、通常ケアと比較して、心血管イベント(心血管疾患による死亡、脳卒中、心不全または急性冠症候群の悪化による入院の複合)の発生を低下させるかもしれない

根拠となった試験の抄録

目的:臨床診療ガイドラインでは、症状のある心房細動(AF)患者へのリズムコントロール治療を制限している。EAST-AFNET 4試験では、早期に系統的なリズムコントロールを行うことで、症状に応じたリズムコントロールと比較して臨床転帰が改善することが示された。

方法:EAST-AFNET 4試験では、無症候性患者(EHRAスコアI)と症候性患者における早期リズムコントロール療法の効果を比較した。
主要評価項目は、心血管疾患による死亡、脳卒中、心不全または急性冠症候群の悪化による入院の複合とし、time-to-event解析を行った。

結果:ベースラインでは801/2,633例(30.4%)の患者が無症候性であった[平均年齢71.3歳、女性37.5%、平均CHA2DS2-VAScスコア3.4、169/801例(21.1%)の心不全]。
早期リズムコントロールにランダムに割り付けられた無症候性患者(395/801例)は、症候性患者と比較して、同様のリズムコントロール治療を受けた[例:24ヵ月目のAFアブレーションについて、無症候性患者では75/395例(19.0%)、症候性患者では176/910例(19.3%)、P=0.672]。
抗凝固療法や心血管疾患の合併治療は、症候性患者と無症候性患者で差がなかった。
主要アウトカムは、早期リズムコントロールにランダムに割り付けられた79/395例の無症候性患者と、通常ケアにランダムに割り付けられた97/406例の患者で発生し(ハザード比 0.76、95%信頼区間0.6〜1.03)、症候性患者とほぼ同じであった。24ヵ月後の追跡調査では、症状の変化はランダム化群間で差がなかった(P=0.19)。

結論:これらの結果は、最近心房細動と診断され、心血管疾患を併発しているすべての患者において、リズムコントロール療法の利点を議論する共有の意思決定を求めるものである(EAST-AFNET 4; ISRCTN04708680; NCT01288352; EudraCT2010-021258-20)。

キーワード:アブレーション; 抗不整脈薬; 心房細動; 臨床試験; リズムコントロール; 症状

引用文献

Systematic, early rhythm control strategy for atrial fibrillation in patients with or without symptoms: the EAST-AFNET 4 trial
Stephan Willems et al. PMID: 34447995 DOI: 10.1093/eurheartj/ehab593
Eur Heart J. 2021 Aug 27;ehab593. doi: 10.1093/eurheartj/ehab593. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34447995/

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