COVID-19入院患者における退院後の感染後症候群には何がありますか?(後向き研究; BMJ. 2021)

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COVID-19感染後に後遺症がある?

2019年後半にSARS-CoV-2感染が認識されて以来、学術的・臨床的には呼吸器症状に重点が置かれてきました。一方で、多臓器への直接的な影響や、医療提供や患者の行動の変化を通じて、心血管疾患やがんなど、他の臓器系や疾患プロセスに間接的な影響を与えるという証拠が増えています。このような感染後の疾患はCOVID-19感染後症候群(post-covid syndrome)と呼称されるようになっています。

米国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence:NICE)は、「covid-19に一致する感染症の最中または後に発症し、12週間以上継続し、代替診断では説明できない兆候や症状」と定義しています。またNICEのガイドラインでは、covid-19後の症状が6~12週間継続する場合、covid-19後症候群評価クリニックへの紹介を推奨しています。既往症や危険因子は、急性COVID-19のアウトカム(集中治療室への入室や死亡率など)の予測因子となりますが、COVID-19感染後症候群の疫学は、臓器系を超えた中長期的な病態生理が不明であるため、あまり明確に定義されていません。

そこで今回は、英国のデータベースを用いたCOVID-19感染後症候群(post-covid syndrome)を検証した研究をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

英国のデータベースに登録された約5,000万例のデータから、86,955例が対象となりました。COVID-19患者と一般集団がマッチされた後向き研究の結果から、平均140日間の追跡調査で、急性COVID-19発症後に退院した患者の約3分の1が再入院し(47,780例中14,060例)、10例に1例以上(5,875例)が退院後に死亡しました。これらの事象は、マッチさせた対照群に比べて、それぞれ4倍と8倍の割合で発生しました。

また呼吸器疾患、糖尿病、心血管疾患の罹患率が有意に上昇しました(いずれもP<0.001)。

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以前からCOVID-19感染後の後遺症の可能性について報告されています。本試験結果を詳細にみてみると、COVID-19感染者は、対照群と比較して、退院後の主要な心血管イベント(MACE)発生が3.0(2.7~3.2)倍、慢性肝疾患で2.8(2.0~4.0)倍、慢性腎疾患で1.9(1.7~2.1)倍、糖尿病で1.5(1.4~1.6)倍と診断される頻度が高いことが明らかとなりました。

退院後の呼吸器疾患の発症については、14,140例(29.6%)で、そのうち6,085例は新規発症でした。その結果、1,000人・年当たりの発症率はそれぞれ770(95%CI 758~783)および539(525~553)であり、対照群の6.0(5.7~6.2)倍および27.3(24.0~31.2)倍高かったとのこと。

COVID-19感染後症候群としては、以前に味覚異常や嗅覚異常の持続、抜け毛の増加、血栓症リスクの増加などが報告されています。今回の研究結果からも、感染後の後遺症として、呼吸器疾患だけでなく、さまざまな疾患リスクを増加させる可能性が示されました。ただし、本試験はあくまでも相関関係にすぎません。続報を待ちたいと思います。

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✅まとめ✅ COVID-19後に退院した患者は、一般集団で予想されるリスクと比較して、多臓器不全の発生率が高かった。

根拠となった論文の抄録

目的:退院後のCOVID-19患者における臓器別機能障害の割合を、マッチさせた一般集団の対照群と比較して定量化すること。

試験デザイン:後向きコホート研究。

試験設定:イングランドのNHS病院。

試験参加者:COVID-19で入院し、2020年8月31日までに生存したまま退院した47,780例(平均年齢65歳、男性55%)で、英国の約5,000万例のプール及び10年間の電子健康記録から得られた個人的および臨床的特徴を持つ対照群と正確にマッチさせた。

主要評価項目:2020年9月30日までの病院への再入院(対照群ではあらゆる入院)、全死亡率、および呼吸器疾患、心血管疾患、代謝疾患、腎臓疾患、肝臓疾患の診断率。年齢、性別、民族による率比の変動。

結果:平均140日間の追跡調査で、急性COVID-19発症後に退院した患者の約3分の1が再入院し(47,780例中14,060例)、10例に1例以上(5,875例)が退院後に死亡した。これらの事象は、マッチさせた対照群に比べて、それぞれ4倍と8倍の割合で発生した。
呼吸器疾患(P<0.001)、糖尿病(P<0.001)、心血管疾患(P<0.001)の罹患率も有意に上昇し、1,000人・年あたりの罹患数はそれぞれ770(95%CI 758~783)、127(122~132)、126(121~131)であった。率比は、70歳未満では70歳以上よりも大きく、少数民族では白人集団よりも大きかったが、その差が最も大きかったのは呼吸器疾患であった。
70歳未満で10.5(95%CI 9.7~11.4) vs. 70歳以上で4.6(4.3~4.8)、非白人で11.4(9.8~13.3) vs. 白人で5.2(5.0~5.5)

結論:COVID-19後に退院した患者は、一般集団で予想されるリスクと比較して、多臓器不全の発生率が高かった。リスク増加は高齢者に限ったものではなく、民族間でも一様ではなかった。COVID-19感染後症候群の診断、治療、予防には、臓器や疾患に特異的なアプローチではなく、統合的なアプローチが必要であり、危険因子の確立には早急な研究が必要である。

引用文献

Post-covid syndrome in individuals admitted to hospital with covid-19: retrospective cohort study
Daniel Ayoubkhani et al. PMID: 33789877 PMCID: PMC8010267 DOI: 10.1136/bmj.n693
BMJ. 2021 Mar 31;372:n693. doi: 10.1136/bmj.n693.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33789877/

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