起立性低血圧における厳格な降圧治療の効果はどのくらいですか?(RCTのSR&MA; Annals of Internal Medicine 2020)

Effects of Intensive Blood Pressure Treatment on Orthostatic Hypotension

A Systematic Review and Individual Participant–based Meta-analysis

Stephen P. Juraschek et al.

Effects of Intensive Blood Pressure Treatment on Orthostatic Hypotension: A Systematic Review and Individual Participant–based Meta-analysis: Annals of Internal Medicine: Vol 0, No 0
Whether intensive blood pressure–lowering treatment in adults with hypertension causes orthostatic hypotension is unclear. This systematic review and indi...

Annals of Internal Medicine 2020

Reviews 10 September 2020

PROSPERO:CRD42020153753

Primary Funding Source: National Heart, Lung, and Blood Institute, National Institutes of Health.

背景

集中的に血圧(BP)を下げる治療は心血管疾患のリスクを低下させるが、起立性低血圧(OH)を引き起こす可能性が懸念されている。

目的

高血圧成人における集中的な血圧(BP)低下治療のOHへの影響を検討する。

データソース

MEDLINE、EMBASE、およびCochrane CENTRALの運用開始から2019年10月7日まで、言語制限なし。

試験の選択

血圧が高いまたは高血圧の成人500例以上が関与し、治療期間が6ヵ月以上のBP薬理学的治療(より集中的なBP目標または降圧薬使用)のランダム化試験。

試験の比較は、低いBP目標またはプラセボに割り付けられた群とし、アウトカムはOHとした。

OHは、座位から立位に体位を変えた後の収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下したと定義した。

データの抽出

研究者2名が独立して論文を抄録し、バイアスのリスクを評価した。

データ合成

・BPの治療目標を検討した試験は5件で、うち4件では降圧薬とプラセボの比較が検討された。

・BPの治療目標を検討した試験には参加者18,466例が含まれ、127,882例が追跡調査を受けた。試験はオープンラベルで、試験間における効果の異質性は最小限であった。

・集中的なBP治療はOHのリスクを低下させた。

オッズ比 0.93、95%CI 0.86~0.99

・効果はランダム化前のOHでは差がなかった(相互作用のP=0.80)。

・4つの追加プラセボ対照試験を含む感度解析では、全体およびサブグループの所見に変化はなかった。

試験の限界

OHの評価は座位(仰臥位ではない)で行われ、起立後の最初の1分間は含まれていなかった。転倒および失神に関するデータは得られなかった。

結論

集中的な血圧低下治療は起立性低血圧のリスクを低下させる。

起立性低血圧は、より集中的な血圧降下治療の前に、またはより集中的な血圧降下治療の設定の中で、高血圧症の治療を回避したり、治療のエスカレーションを解除したりする理由とみなすべきではない。

コメント

以前から過度の降圧による起立性低血圧リスクが報告されています。したがって、過度の降圧(収縮期血圧100mmHg未満、拡張期血圧60mmHg未満が目安)における起立性低血圧の症状が認められる際には、 降圧薬の減量あるいは中止が考慮されます。

さて、本試験結果によれば、厳格な降圧により、対照群と比較して起立性低血圧リスクの減少が認められました(オッズ比 0.93、95%CI 0.86~0.99)。これまでの報告と矛盾していますが、起立後の最初の1分間、転倒および失神に関するデータが得られていないことから納得できる結果であると考えます。

起立性低血圧自体は、基本的には予後良好な状態です。問題となるのは、起立性低血圧による失神、その後の転倒による外傷や入院です。つまり、それらのアウトカムが得られていない状況では、厳格な降圧が害になるのか否かは不明です。一方、起立性低血圧が起こる機序から考えれば、起立時の過度の血圧低下(収縮期血圧 20mmHg/拡張期血圧 10mmHg以上の低下)が起こらなければ、失神や転倒が起こらないと考えるのが妥当でしょう。この矛盾を解消するには更なる情報が必要です。

有料文献であるため、詳細を確認できていませんが、おそらく心拍数の変化について検討されていないのではないかと推測します。起立性低血圧については、収縮期血圧 20mmHg/拡張期血圧 10mmHg以上の低下の他、心拍数 20拍/分 以上の際に起こることも報告されています。さらに起立性低血圧には、古典的起立性低血圧(いわゆる起立性低血圧)、血管迷走性起立性低血圧、遅発性起立性低血圧の3種類が報告されています。推測に推測を重ねることになりますが、今回組み入れられた試験では、起立3分後のデータのみのようですので、古典的起立性低血圧なのではないでしょうか。つまり本試験結果により得られた結果は、厳格な降圧は古典的起立性低血圧のリスクとはならない可能性が示された、ということになるのではないでしょうか。

どのタイプの起立性低血圧が、失神や転倒リスクに関与しているのか、どの程度の影響があるのかについては今後の課題であると考えます。

✅まとめ✅ RCT5件のメタ解析の結果によれば、厳格な血圧低下治療は起立性低血圧のリスクを低下させたが、失神や転倒に対する影響は不明である

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