Association of Statin Use With All-Cause and Cardiovascular Mortality in US Veterans 75 Years and Older
Ariela R Orkaby et al.
JAMA. 2020 Jul 7;324(1):68-78. doi: 10.1001/jama.2020.7848.
PMID: 32633800
PMCID: PMC7341181 (available on 2021-01-07)
試験の重要性
75歳以上の成人における動脈硬化性心血管病(ASCVD)の一次予防のためのスタチン療法に関するデータは限られている。
目的
75歳以上の退役軍人における死亡率およびASCVDの一次予防におけるスタチン使用の役割を評価する。
試験デザイン、設定、参加者
退役軍人保健局(VHA)のデータを使用したレトロスペクティブコホート研究で、75歳以上の成人でASCVDを発症しておらず、2002~2012年に臨床検査を受けたヒトを対象とした。
フォローアップは2016年12月31日まで継続した。
すべてのデータはメディケアおよびメディケイドの請求書および医薬品データにリンクされていた。
スタチン使用歴のある患者を除外し、新規使用者のデザインを用いた。
スタチン使用とアウトカムとの関連を評価するために、Cox比例ハザードモデルを適合させた。
解析は、ベースライン特性のバランスをとるために、傾向スコアの重複加重を用いて実施された。
曝露
すべての新規スタチン処方。
主要アウトカムおよび測定法
主要アウトカムは全死亡および心血管死亡であった。
副次アウトカムには、ASCVDイベント(心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈バイパスグラフト手術または経皮的冠動脈インターベンションによる再灌流)を複合したものが含まれた。
結果
・対象となった退役軍人326,981例(平均[SD]年齢 81.1[4.1]歳、男性 97%、白人 91%)のうち、57,178例(17.5%)が試験期間中に新たにスタチン系薬剤を開始した。
・平均追跡期間 6.8年(SD 3.9年)の間に、合計206,902例の死亡が発生し、そのうち53,296例が心血管疾患による死亡で、スタチン使用者と非使用者ではそれぞれ78.7例、98.2例/1,000人・年であった。
★加重罹患率差[IRD]/1,000人年 = -19.5、95%CI -20.4~ -18.5
—
・1,000人年当たりの心血管死は、スタチン使用者で22.6人・年、非使用者で25.7人・年であった。
★加重罹患率差[IRD]/1,000人年 = -3.1、95%CI -3.6~ -2.6
—
・複合ASCVD転帰については、123,379件イベントが発生し、スタチン使用者と非使用者でそれぞれ1,000人年あたり66.3件、70.4件であった。
★加重平均IRD/1,000人年 = -4.1、95%CI -5.1~ -3.0
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・プロペンシティスコア重複重み付けを適用した後のハザード比は、スタチン使用者と非使用者を比較した場合、全死亡率で0.75(95%CI 0.74~0.76)、心血管死亡率で0.80(95%CI 0.78~0.81)、ASCVDイベントの複合体で0.92(95%CI 0.91~0.94)であった。
結論および関連性
75歳以上の退役軍人でベースライン時にASCVDを発症していないヒトでは、スタチンの新規使用は全死亡および心血管死亡のリスク低下と有意に関連していた。
ASCVDの一次予防のための高齢者におけるスタチン療法の役割をより明確に決定するためには、ランダム化臨床試験を含めたさらなる研究が必要である。
コメント
スタチンによる心血管および総死亡リスクの抑制については、対象患者により得られる益が異なり、特に高齢者や心血管リスクのない女性において、益が少ない、あるいは更なる益が得られない可能性が報告されています。
さて、本試験結果によれば、75歳以上の退役軍人でベースライン時にASCVDを発症していない参加者において、スタチンの新規使用は、非使用と比較して、総死亡および心血管死亡のリスクを有意に低下させました。
試験の限界としては、参加者の背景(平均[SD]年齢 81.1[4.1]歳、男性 97%、白人 91%)から一般化が困難であること、またベースライン時にASCVDを有していなかったとしても、心臓への負担が多かった可能性があります。
さらに後向きのコホート研究ですので、あくまでも相関関係までしか述べる事はできません。過去の臨床試験の結果を踏まえると、結果は割り引いて捉えておいた方が良いように思います。
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