【批判的吟味】CKD患者におけるアロプリノール使用はeGFR低下を抑えられますか?(DB-RCT; CKD-FIX trial; NEJM 2020)

ランダム化比較試験 Randomized Controlled Trial Random

Effects of Allopurinol on the Progression of Chronic Kidney Disease

Sunil V Badve et al.

N Engl J Med. 2020 Jun 25;382(26):2504-2513. doi: 10.1056/NEJMoa1915833.

PMID: 32579811

DOI: 10.1056/NEJMoa1915833

Funded by the National Health and Medical Research Council of Australia and the Health Research Council of New Zealand

Australian New Zealand Clinical Trials Registry number, ACTRN12611000791932.

背景

血清尿酸値の上昇は慢性腎障害の進行と関連している。アロプリノールによる尿酸値低下治療が、進行リスクのある慢性腎臓病患者の推定糸球体濾過率(eGFR)の低下を抑制できるかどうかは不明である。

方法

このランダム化比較試験では、ステージ3または4の慢性腎臓病で痛風の既往歴がなく、尿中アルブミン:クレアチニン比が265以上(アルブミンはmg単位、クレアチニンはg単位)、または過去1年間に体表面積1.73㎡あたりのeGFRの低下が3.0mL/min以上であった成人をアロプリノール(100~300mg/日)またはプラセボ投与群にランダム割り付けし、主要評価項目はeGFRの低下を抑制した。

主要アウトカムはランダム化から104週目までのeGFRの変化であり、慢性腎臓病疫学共同研究のクレアチニン式を用いて計算された。

結果

・アロプリノール投与群(185例)またはプラセボ投与群(184例)にランダム割り付けされた予定患者620例中369例が登録された後、登録が遅れたため、登録は中止された。

・それぞれの群において患者3例が割り付け直後に辞退した。残りの363例(平均eGFRは31.7ml/min/1.73㎡、尿中アルブミン:クレアチニン比の中央値は716.9、平均血清尿酸値は8.2mg/dL)を主要アウトカムの評価に含めた。

・eGFRの変化はアロプリノール群とプラセボ群で有意差は認められなかった。

 アロプリノール群:1年間に -3.33ml/min/1.73㎡[95%信頼区間(CI) -4.11~ -2.55]

 プラセボ群:1年間に -3.23ml/min/1.73㎡[95%CI -3.98~ -2.47]

★平均差:1年間に -0.10ml/min/1.73㎡[95%CI -1.18~0.97]、P=0.85

・重篤な有害事象は、アロプリノール群で182例中84例(46%)、プラセボ群で181例中79例(44%)に報告された。

結論

慢性腎疾患を有し、進行リスクが高い患者において、アロプリノールによる尿酸値低下治療はプラセボと比較してeGFRの低下を遅らせることはできなかった。


概要

PICOTS

P: 痛風の既往がなくCKD進行リスクの高いステージ3あるいは4のCKD患者(C糖尿病?高血圧? G3 bA3)

   患者背景(アロプリノール群 vs. プラセボ群)

  • 年齢       :62.3±12.6歳 vs. 62.6±12.9歳
  • 男性比率     :38% vs. 36%
  • 人種あるいは民族
    • 白人                      :79% vs. 71%
    • オーストラリアのアボリジニまたはトレス海峡島民:1% vs. 1%
    • ニュージーランド・マオリ族           :7% vs. 8%
    • アジア人                    :4% vs. 6%
    • その他                     :9% vs. 13%
  • BMI中央値(IQR):30(26〜36) vs. 31(27〜35)
  • 血圧
    • 収縮機:138.4±18.2 vs. 140.2±20.0
    • 拡張期:76.8±11.1 vs. 76.5±12.2
  • 腎疾患の主原因
    • 糖尿病性腎症 :41% vs. 50%
    • 日糖尿病性腎症:59% vs. 50%
  • 糖尿病      :57% vs. 59%
  • 高血圧症     :94% vs. 96%
  • 心血管疾患    :32% vs. 35%
  • SF-36 QOLスコア :68.8±18.7 vs. 68.2±18.8
  • ACE阻害薬使用率 :39% vs. 41%
  • ARB使用者使用率 :35% vs. 37%
  • eGFR      :31.6±11.7 mL/min/1.73㎡ vs. 31.9±12.4 mL/min/1.73㎡
  • ACR中央値 (IQR) :716.9(237.2〜1947) vs. 716.9(246.0〜1857)
  • 平均の血清尿酸値 :8.2±1.8 mg/dL vs. 8.2±1.7 mg/dL

I :アロプリノール100mg〜300mg/日

  (投与量漸増期では、アロプリノール100mgまたはプラセボの開始用量を1日1錠とし、投与量調整の基準をすべて満たしていれば、4週間毎に1日3錠まで増量することができた。血清尿酸値に基づく投与量の調整は、試験期間中はいかなる時も認められなかった。)

C:プラセボ

O:主要アウトカムベースライン(ランダム化)から104週目までのeGFR変化

慢性腎臓病疫学(CKD-EPI)のクレアチニン式を用いて決定された。感度分析は、シスタチンC単独およびクレアチニンとの併用に基づくCKD-EPI式と、腎疾患における食事療法の変更式を用いて実施した。

  副次的アウトカム — ベースラインから40%のeGFR低下(最後の試験の訪問を除き、次回予定されている試験の訪問時に2回目の測定を行うことで確定)、末期腎疾患(30日以上の透析または腎移植)、または何らかの原因による死亡の複合。ベースラインから30%のeGFR低下、末期腎疾患、または何らかの原因による死亡の複合。複合腎臓アウトカムの個々の構成要素、血圧、アルブミン尿、血清尿酸値、心血管イベント、何らかの原因による入院、および36項目の短形健康調査におけるQOLサマリースコア。

  安全性のアウトカム — すべての重篤な有害事象と薬物反応が含まれた。特定の安全性転帰は、多形性紅斑、Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死分解症、軽度の発疹、過敏症症候群、再生不良性貧血、血小板減少症。

T:効果・予後、二重盲検、RCT、ITT解析

S:オーストラリアおよびニュージーランドの31施設、フォローアップ104週間(2年;初期12週の用量漸増期を含む、評価は16週間毎に実施)

選択基準

組入基準

  • ステージ3または4の慢性腎臓病(eGFR 15~59mL/min/1.73㎡)
  • 慢性腎臓病の進行リスクが高いと判断された成人:慢性腎臓病の進行リスクが高いと定義されたのは、尿中アルブミン:クレアチニン比が265以上(アルブミンはmg単位、クレアチニンはg単位)、または過去12ヵ月間にeGFRが3.0ml/min/1.73㎡以上低下したこと(少なくとも3回のeGFR測定の最初と最後の測定の差として計算され、各検査は少なくとも4週間間隔で実施された)

除外基準

  • 臨床的に確立された痛風の既往歴
  • アロプリノールに対する過敏症の既往歴
  • 腎移植患者
  • アザチオプリン、6-メルカプトプリン、テオフィリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、プロベネシド、フェニトイン、またはクロルプロパミドとの同時治療
  • アロプリノールの適応症(臨床検査または画像検査における痛風、トフスまたはトフィの頻回発作の既往歴、尿酸腎症、尿酸ネフローリチア症または尿石症を含む)
  • 現在の非皮膚癌の悪性腫瘍
  • 直近 3 ヶ月以内に未解決の急性腎障害
  • 現在妊娠中、授乳中
  • 本試験の条件を理解し、遵守する能力を妨げる精神的な病気や状態のある場合
  • 今後6ヶ月間に維持透析または腎移植の選択的または差し迫った開始が予想される場合

批判的吟味

✅ ランダム化されているか? ⭕️ ランダム化されている

ランダム化に用いた因子:研究センター、CKDステージ(ステージ3 vs. ステージ4)、アルブミン尿(ランダム尿ACR ≧60 mg/mmol vs. <60 mg/mmol)、糖尿病の有無

✅ ブラインドされているか? ⭕️ 二重盲検

 研究参加者、治療担当医およびその他のケア提供者、アウトカム評価者、研究責任者、研究統計学者が盲検化された。

盲検化されていない研究統計学者が、治療群間のバランスを確保するために定期的に治療配分をレビューした。また盲検化されていない統計学者は、データ及び安全性モニタリング委員会のメンバーがその 任務を遂行するために必要な文書を作成した。

✅ 隠蔽化されているか? ⭕️ ウェブベースのランダム化システムを利用

治療割付の隠蔽を確実にするために、シドニーのNational Health and Medical Research Council(NHMRC)臨床試験センターが管理するFlexetrials™と呼ばれる中央のウェブベースのランダム化システムを使用して行われた。

✅ ベースラインは同等か? 🔺 ほぼ同等だが、使用薬剤の記載がない、塩分および蛋白の摂取制限の記載なし。

患者のベースラインの特徴は、腎疾患の主な原因を除いて、割り付けられた治療群間でバランスがとれていた。平均(±SD)eGFRは31.7±12.0mL/min/1.73㎡、尿中アルブミン:クレアチニン比の中央値は716.9(四分位間範囲 244.3~1857)であった。平均血清尿酸値は8.2±1.8mg/dL(490±110 μmol/L)であった。

✅ ITT解析か? ⭕️ Table 1およびFigure 1より判断

✅ 脱落は結果に影響を及ぼすほどか? ⭕️ 問題ない程度と判断

104週間の追跡期間中に、アロプリノール群では30%(54例)、プラセボ群では25%(45例)が投与を中止した。アロプリノール群73%(132例)、プラセボ群80%(144例)が104週の追跡期間を終了した。

✅ サンプルサイズは計算されているか?充分か? 🔺 計算されているが組入を途中で中止しているためサンプルサイズは不充分

eGFR の年間低下を3 mL/min/1.73㎡と仮定した場合、フォローアップまでの損失は5%、ドロップイン率とドロップアウト率は5%で、620 人の患者(各群 310 人)を登録すると、2 年間のフォローアップ後のeGFR低下の20%の減衰を検出するためのパワー90%が得られる。この差(1年当たり0.6 ml/mL/1.73㎡)は、2~3年間で0.5~1.0mL \min1.73㎡/年のeGFRの傾きを減少させる範囲の下限であり、コホート研究やランダム化試験では、その後の数年間の末期腎疾患の臨床的転帰のハザード比は約0.7であった。

結果

12週間の用量漸増期終了時における薬剤の使用量

12週間の用量漸増期終了時に、アロプリノール1日1回3錠は69%(126/182例)、2錠は9%(17/182例)、1錠は5%(9/182例)、プラセボ群1日1回3錠は70%(126/181例)、2錠は15%(27例)、1錠は6%(10例)だった。

投与期間

アロプリノール群に割り付けられた患者は平均75.8週(追跡期間91.5週の83%)、プラセボ群に割り付けられた患者は平均83.0週(追跡期間94.2週の88%)服用した。

主要評価項目

ベースライン(ランダム化)から104週目までのeGFR変化

・eGFRの変化は、アロプリノール群とプラセボ群で有意差は認められなかった。

  • アロプリノール群:-3.33mL/min/1.73㎡/年、95%CI -4.11~ -2.55
  • プラセボ群   :-3.23mL/min/1.73㎡/年、95%CI -3.98~ -2.47

 ★平均差:-0.10mL/min/1.73㎡/年、95%CI -1.18~0.97、P=0.85

・追加解析および感度解析でも同様の結果が得られ、主要アウトカムの結果は、事前に特定された幅広いサブグループで一貫していた。

・ポストホック無益性分析では、患者620例の目標登録が達成されていたとしたら、臨床的に意味のある差である0.6mL/min/1.73㎡/年の差を検出するための条件付き検出力は、1000例に1例しかいなかったであろうことが明らかになった。

・ポストホックの検出力計算では、中止率30%に対応するために必要なサンプルは1,006例であることが示された。患者1,006例のサンプルサイズに対する条件付き検出力は17%(無益指数 83%)であった。

有害事象

重篤な有害事象

  • アロプリノール群:46%
  • プラセボ群   :44%

心血管イベント

  • アロプリノール群:19%
  • プラセボ群   :26%

呼吸器イベント

  • アロプリノール群:9%
  • プラセボ群   :11%

消化器イベント

  • アロプリノール群:11%
  • プラセボ群   :13%

腎イベント

  • アロプリノール群:23%
  • プラセボ群   :18%

神経学的イベント

  • アロプリノール群:6%
  • プラセボ群   :4%

筋骨格系イベント

  • アロプリノール群:6%
  • プラセボ群   :10%

神経学的イベント

  • アロプリノール群:6%
  • プラセボ群   :4%

内分泌イベント

  • アロプリノール群:4%
  • プラセボ群   :2%

腫瘍あるいは新生物

  • アロプリノール群:4%
  • プラセボ群   :4%

血液学的イベント

  • アロプリノール群:2%
  • プラセボ群   :1%

皮膚関連イベント

  • アロプリノール群:6%
  • プラセボ群   :6%

その他のイベント

  • アロプリノール群:9%
  • プラセボ群   :5%

コメント

CKDと尿酸値の関連性については以前から報告されていますが、決定的なエビデンスは示されていません。

さて、本試験結果によれば、CKD かつ進行リスクが高い患者におけるアロプリノールの使用は、プラセボと比較して、eGFRの低下を遅らせることができませんでした。

ただし、本試験は組み入れを中止していますので、サンプルサイズが不充分であった可能性があります(事後分析によれば、サンプルサイズを大きくしてもアロプリノールの効果はなさそうですが)。また追跡期間が短い可能性もあります。さらにアロプリノールの用量は、血清尿酸値に基づいたものではなく、初期12週間の際に決定された固定用量です。少なくともこれらが試験の制限になると考えられます。

✅まとめ✅ 痛風の既往がなくCKD進行リスクの高いステージ3あるいは4のCKD患者におけるアロプリノールの使用は、プラセボと比較して、eGFRの低下を遅らせなかった

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